労働審判は短期決戦! ~申立人の主張と立証のコツは?

弁護士の岩田です。

渋谷の街も桜が散り、だいぶ暖かくなってきました。緊急事態宣言も解除され、人でも増えてきた実感があります。

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さて、先日、労働者側の代理人として解雇を争う労働審判を申し立てた事案で、10か月分相当の解決金を獲得した事案がありました。

解雇の有効性を争う事案で10か月分の解決金が獲得できたのは、裁判所に解雇が無効であることを十分に理解してもらえたからだと思っていますし、良い結果だったと思っています。

日々の法律相談でも、どのように労働審判を進めたらいいかというご質問を受けることもしばしばあります。

私が労働審判での主張立証で気を付けていることを紹介しますので、労働審判の申立てを考えている方は参考にしてみてください。

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まず、労働審判は、

申立て  裁判所に申立書を提出

期日調整 労働審判を開く日の決定と、相手方への通知(申立ての約1週間後)

相手方(会社側)が答弁書を提出(第1回期日の1~2週間前)

労働審判期日1回目 申立てから1~2カ月後

労働審判期日2回目 第1回期日の2週間~1カ月後

労働審判期日3回目 第1回期日の2週間~1カ月後

という感じで進みます。

労働審判の特徴は、審理の期日が3回しかないということです。

労働審判での解決を目指すのであれば、この3回の間に、当事者の主張・立証、裁判所による事実の認定・心証の形成、和解の話合いを終えなければなりません。

そうすると、裁判所には早い段階で事実の把握と心証の形成をしてもらって、早ければ1回目、遅くても2回目で和解の話合いを始めたい、ということになります。

そのために私が気を付けているポイントは、以下の3点です。

①申立書で、事実の経緯を時系列で整理しておく

裁判官には、申立書である程度事案の流れを把握してもらい、答弁書で出てくる会社側の反論の予測までしてもらう必要があります。そのためには、申立書において、事実の経緯を時系列で整理して記載しておくのが大事だと思います。

自身に有利な事実だけ切り取って申立書に記載するやり方もあると思いますが、答弁書で、申立書にない事実がたくさん主張されると、裁判官もわかりにくいですし、印象も良くない気がしています。

②重要な証拠は初回までに提出する

訴訟では、証拠は最初からすべて出さず、相手の答弁を見て提出したりします。

他方、労働審判では、初回の期日までに証拠まで見てある程度の心証を作ってもらいたいので、自分の主張を裏付ける証拠はできるだけ申立書と一緒に提出しています。

③初回までに答弁書に対する認否・反論をしておく

3点目が結構大事だと思っていますが、会社側の答弁書に対して、第1回期日前に認否・反論する書面を提出しておく、ということです。

労働審判の手続では、第1回期日までに申立人の申立書と証拠、相手方の答弁書と証拠が提出されるということが想定されています。

その場合、裁判所は、申立書と答弁書を読んで争点を把握し、当日は争いがある点や事実認定に必要な点について当事者に聴取しています。

ただ、会社側の主張について、当日、その場で事実聴取をされても、適切に反論や証拠の提示ができないこともあります。特に、申立人にとっては初めて労働審判期日であることがほとんどですので、裁判官に対して、口頭で自身の主張をうまく伝えること自体、わりと難易度が高いものです。

そのため、会社側の答弁書が提出されたら、(第1回期日まで時間がなくても)依頼者と打合せを行い、認否と反論を書面にまとめて、必要であれば証拠も付けて、期日前に提出するようにしています。

これにより、当日申立人側への事実の確認の時間はぐっと減りますし、裁判官の労力も削減できますので、有利な和解を引き出しやすい気がしています。

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もちろん、事案によって違う進め方が望ましいこともありますが、労働審判で早期解決を狙っている方は参考にしてみてください。