【有罪?無罪?】刑事事件その3
2016.09.14更新
こんばんは。弁護士の砂子です。
渋谷の街もすっかり秋の香りがしてきておりますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
今回は、前回に引き続き、刑事事件についてお話します。
刑事裁判になった場合、実際のところ、どうなるの?という疑問にお答えします。
今回のお話は、罪を認めている場合の裁判のお話ですので、それを念頭に読んでください。
【裁判中の過ごし方】
罪を認めている場合、裁判は概ね1回で終わります。判決を言い渡される日を含めると2回で終わりです。
ですから、あなたが、出頭するのは概ね2回です。
1回の裁判時間は概ね40分。判決言渡しは概ね5分。
1回目の裁判の後、1週間~10日で判決が言い渡されます。
〈では、まずは法廷へ。〉
このとき、身体拘束されている人は、刑務官と手錠・腰ひも状態で法廷に入り、手錠と腰ひもが解ければ裁判開始となります。
保釈中の人は、弁護人と待ち合わせて、一緒に法廷に入るパターンが多いです。
座る位置は、弁護人の前のベンチシート。
〈裁判官登場!〉
裁判官が入廷した際は、全員起立!裁判官が着席したら全員着席!裁判官が「それでは開廷します。」と言ったら裁判開始です。
証言台の前に立って、裁判官から、あなたが起訴された人で間違いないのかの確認があります(人定質問)。
その後、黙秘権があることの説明を受けます。
〈起訴状朗読〉
それらが終わると、検察官が起訴状を朗読します。
その起訴状の内容について、裁判官から、間違っているところがあるのかどうかについて質問されます。
それに対して、「間違いありません」と答えると、次に、裁判官は「弁護人のご意見は」と聞きますので、弁護人はすばやく「被告人と同様です」と回答します。
これは事前の打合せができているからこそ、このような回答になるのであって、これまで罪を認めていた人が裁判になって突然「私は何もやってません!」と言うこともなくはないです。
こうなると、弁護人は「おいっ!な、なに言ってるの!!!」という状態に陥り、少々パニックになるのですが、なんと答えるのかはあなたの自由なので、弁護人はそれに合わせてやるしかないって感じですね。
〈証拠調べ手続〉
起訴状のくだりが終わると、検察官から証拠によって証明したい事実が述べられます。これを冒頭陳述といいます。
これについて、弁護人が意見を述べます。
罪を認めている事件では、概ね「すべて同意します。」と回答することになります。
覚せい剤事件では、「物については、しかるべく」という回答を耳にすることがあると思います。
「しかるべく」、これ日常生活で使うことがない言葉だと思いますが、要は、異議はありません、という意味です。
そして、裁判官が証拠を採用すると、検察官が各証拠書類の要旨を口頭で説明します。
このとき、あなたは黙って聞いていてください。
その後、弁護人の立証は?と裁判官が質問しますので、弁護人は事前に用意した証拠を提出します。
これに対して、検察官から意見が述べられます。
弁護人も検察官もそれぞれの意見は事前に相互に知らせているので、予定調和に事が進むのが通常です。
そして、情状証人(両親や配偶者が多いです。)がいる場合には、情状証人から尋問を行い、その後いよいよあなたの尋問が始まります。
このとき、弁護人から質問をします。弁護人は裁判官に向かって答えてください、というようなことを言うのですが、
質問は横から飛んできますので、そっちを見ずに正面の裁判官を見ながら回答するのはなかなか難しいです。
はっきりと大きな声で回答すれば聞こえますし、伝わりますので、多少横向きになって回答しても問題ありません。
ただ、正面のマイクで録音している関係で、横向き小声だと裁判官から注意されますので、気を付けましょう。
あなたの尋問は、弁護人、検察官、裁判官の順で行われます。
〈論告求刑・弁論〉
尋問が終わると、検察官から論告があります。
これは「被告人を懲役○○年に処するのが相当である」という検察官の意見を述べるものです。
そして、弁護人が弁論要旨を述べます。
「執行猶予が相当である」といった弁護人の意見を述べるのですが、時間にして5分~10分程度、原稿にして、A4紙3枚~4枚程度が多いです。
罪を争っている事件であれば、相当長いものになるのですが、認めている場合には、情状のポイントを端的に指摘する内容のものになります。
これでようやく終わりかというところで、裁判官から「証言台の前へ」と指示があります。
証言台の前に立ったあなたに対して裁判官は「これであなたの裁判は終わります。最後に何か言っておきたいことはありますか」と質問されます。
これについては、必ず何か言わなくてはならないものではありません。
ですが、最後の一言は自分の言葉で罪について、今後のことについて、被害者への思いを述べる機会ですので、ぜひ何かしら述べた方がよいと思っています。
これで裁判は終了です。
その後、弁護人が裁判官と判決日の日程調整を行い、判決日を指定して、裁判は終了します。
日程については、検察官は意見を求められません。
それはいったいなぜなのか?
それは、判決日には検察官であればだれが来てもよいからなのです。
担当の検察官が必ず来なくてはいけないわけではないのです。
弁護人は選任されている者でなければならないので、裁判官は弁護人とだけ日程調整を行うのです。
以上が罪を認めている人の場合の大まかな流れです。
刑事裁判と言っても、上記のような裁判から裁判員裁判までいろいろな種類がありますので、今後各種類ごとに実際のところを紹介していきますね。
それでは、今回はここまで。
皆様ご自愛ください。 弁護士 砂子昌利
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